アシガール・第11回 -1-「走りぬけ!愛のために」
第11回のストーリー
忠清によって高山から救いだされた唯に、高山親子が放った追っ手が迫る。
逃れる唯と忠清は、山寺で一夜を過ごすことに。
跡取りの忠清が高山領にいると知って羽木家は大騒ぎになる。
長沢城の座敷は煙で何も見えない。
- 唯〈 もしかして、あれを使ったのかも? 〉
咳き込む声。
- 唯「若君 !? 」
- 宗熊「宗熊です!」
- 唯「クマ? 」
- 宗熊「宗熊が、いまそばに!」
- 唯〈 クマに恨みはないけど、触ってきたら… 〉
- 宗熊「姫~!」
- 唯「ん、なろ~!」
唯は、突然肩に掛かる手を振り払う。
- 忠清「わしじゃ! 唯」
ゴーグルをつけた忠清。
- 唯「若君!」
近寄ろうとした唯は、忠清のゴーグルにおでこをぶつける。
- 唯「あっ、痛い!」
- 忠清「大事ないか」
- 唯「大丈夫でぇ~す」
- 宗熊「阿湖姫~」
- 忠清「わしの背に」
唯を背負う忠清。
- 忠清「いましばらくの辛抱じゃ」
- 唯〈 夢みたい。若君の背中、…そして 〉
- 唯「若君の髪~」
忠清の髪に顔を埋める唯。
- 宗熊「阿湖姫! もそっと近くに。なぜ逃げるのだ」
- 忠清「宗熊が侍女をお前と間違えておる、あっははははっ!」
- 唯〈 こんな状況でも余裕で笑えるなんて〉
- 唯「チョー好き!!」
背中から抱きしめる唯。
- 忠清「苦しい !!」
脱出劇の始まり。
忠清、たった一人(…悪丸もいるよ…)、敵方の城中。
どうやって救い出すのかと思ったら、尊の発明品だった。
けむり玉がこんなに有効とは!
宗熊だと思ってパンチした唯の手を、忠清は軽くキャッチした。
一人だけ目が見えているものね。いやいや、忠清は反射神経が優れているからね。
おんぶしてもらった唯は、突然地獄から天国へ。
いつも眺めるだけだったこの肩、この背中、この髪。
いつも(たぶんだけど)触りたかった髪に顔を埋め、首にしがみつく。
「苦しい !!」と返す忠清のちょっと冷たいところも、唯はチョー好きだろう。
夜。天野家。
褥で目を覚ます信近。
目の前に父・信茂。
- 信近「まだ、起きておられたのですか」
- 信茂「どう思う? 唯之助のことじゃ。返す返すも奇妙でならぬ。一国の総領が足軽ごときに命を懸けるとは尋常ではあるまい。なぜ若君は唯之助にそこまでして..」
- 信近「グ~、グ~」
座ったまま眠る信近。
信茂に扇子で額をたたかれる信近。
- 信茂「唯之助とは何者じゃ!」
真夜中の疑問。
背筋がゾォ~ッとした。
信茂は、悪い意味で唯を疑ったのだと思ったから。
ある日、現れた足の速い小僧。全く素性の知れない男の子。
それでも、信茂は唯の強い希望を聞き入れ小荷駄組に採用した。
さらに、忠清のお馬番に昇格させた。
追われた唯を天野家の使用人として屋敷にかくまいもした。
唯をどんどん身近に置くようになったが、信用していいものか疑いを捨てられないでいたのでは…。
信茂に「何者じゃ!」と疑われては唯の身が危ない。
しかし、これからのストーリーで信茂の考えが明らかになる。
大事な場で忠高を説得するのが「じい」だから。
やはり、ただものではない「じい!」。
慧眼の士であった。
朝靄の中、険しい山道を進む三人。
- 忠清「川に沿うて歩けば迷わぬと思ったが…」
- 唯「悪丸さぁ~、少しは気ぃ利かせてくれない? 離れて歩くとか出来ないわけ?」
- 悪丸「出来ぬ。若君のそばを離れてはならぬ。おふくろ様に言われた」
- 唯「若君、どう思います? この態度 ! 」
忠清の返す笑顔に唯の足も軽くなる。
手も足も泥まみれの唯。もちろん、悪丸も。
忠清はさすがにそう汚れてはいない。
唯の着物は膝丈にカットされている。
歩くのに邪魔だからと、忠清か悪丸が引き裂いたのか。切り口がほつれている。
唯は弓籠手を身につけている。
羽木城で、唯を助けに出発する忠清がまとっていたものだ。
夜の羽木城では、暗いから弓籠手の色がよく分からなかった。
たぶん、昨日まで忠清が着ていた。
今朝、着方や紐の結び方がわからない唯のため、「寒いからこれを着なさい」と忠清は着せてあげた? かもね♡
唯は白い着物(寝巻?)に、帯は前結び。朝の光に見る弓籠手は、鮮やかなオレンジ色。左半身から左腕にかけての体を覆い、暖かそう。
唯に、よう似合うておる。ブカブカだけど。
唯は悪丸に「離れて歩くとか出来ないわけ?」とムリを言うが、ここは離れないほうがいいと思うよ。(私見(笑))
笑って返す忠清。
忠清は唯を、唯は悪丸を、ときどき振り返り見守る。 厳しい状況の中、なんて親しく楽しそうな三人だろう!
どこかにハイキングしているようなウキウキ気分さえする。
山の中を歩く忠清。
疲れ切った顔の唯が続く。
へたり込む唯。
- 唯「もう駄目だ。二日、水だけなんて…、新記録です」
- 忠清「ハハハ」
目の前にキノコが生えている。
唯の腹の虫が鳴く。
キノコに手を伸ばす唯。
忠清がキノコを投げ捨てる。
- 忠清「腹を壊すぞ」
忠清を見る唯。
- 唯「あっ」
初めて会った時の忠清を思い出す。唯の脳内では……、忠清は太刀を唯に突きつけながら、「どこから参った」 と詰問していたっけ。
「初心忘るべからず」とはこういうことか。
シリーズ第1回、刀を向けた忠清に一瞬で恋をする唯。
♫ 出会った頃の二人に も一度戻ってみよう そして二人で手をつなぎ しあわせになろうよ ♫
初めて出会ったとき「お腹が空いたからキノコを食べる」という唯に、忠清は「毒じゃ。食うたら心の臓が止まる」と教える。
毒キノコだと親切に教えたのだと今まで信じてきた。
でも、きっと毒ではなかったと考えられる。
本当に毒だったら「好きなだけ食せ」とは言わないだろう。実際に唯は、ほおばってしまったのだから。忠清の止めるのが遅ければ死んでしまう。
ある意味、初対面の人をからかったのだろうか。いやいや、小僧に興味を持ったのだろう。
今回の忠清は、キノコを黙って遠くへ放り投げ「腹を壊すぞ」と言う。
親切の度合いが違っている。
忠清にとって、唯はやっぱり大事な人になっている。
- 唯「若君だって何も食べてないのに、なんで平気でいられるんですか。いつもと全然変わらない」
腰を下ろす忠清。
- 忠清「そうじゃのう。幼いころより、父上から幾度も言われておったのじゃ。まず徒歩で戦う雑兵の腹から満たせ。大将は食らわずとも笑っておれと」
- 唯「大将なのに?」
- 忠清「実のところ、大将の一番の役目は痩せ我慢じゃ」
- 唯「小さい頃から、そんなこと教えられるんだ」
忠清を見つめる唯。
- 唯「なんか…」
- 忠清「何じゃ?」
- 唯「なんか今…、モーレツにギュッと」
忠清に向かい手を伸ばす唯。
- 唯〈 やっぱりダメだ。阿湖姫に悪いもん 〉
ちょっと改まった様子の忠清が…。
- 忠清「唯…」
水や食べ物を探しに行った悪丸がもどってくる。
- 悪丸「若君! 向こうに寺がある。人もいる」
「雑兵の腹から満たせ」と教える父・忠高は名君であろう。
威張ってばかりのように見えるが、家来や領民に慕われていると思われる。だって自分が食べなくても兵士に食べさせ、自分は笑っているのだから。
このとき忠清は唯の「お母さんスイッチ」を押したかもしれない。
唯はギュッとされたいのではなく、ギュッとしたいと手を伸ばした。
「痩せ我慢じゃ」と言った後の忠清は、肩をすぼめ少し震えるようにして寂しそうに感じたから。
忠清は今まで周囲に強い部分を見せてきた。しかし唯には「大将の役目は痩せ我慢じゃ」と言えるほどに自分の内側を出し始めた。
♬ 言えずに隠してた昏い過去も( !? )あなたがいなきゃ永遠に昏いまま♬
唯には言えた。
さあ、さあ、ここでクイズです。
Q 悪丸がもどってきて、忠清の言葉を遮ります。忠清が「唯…」と呼びかけた言葉の後には、何と言ったのでしょうか。
悪丸め、タイミングが最悪 !
最悪なのは如古坊も !!
源三郎もだ !!!
すみません。つい先走りしました。
妄想はいっぱいあるけれど。 答えはわかりません。たぶん永遠に。
重ね重ね、すみません <(_ _)>
(つづく)