アシガール・私的(素敵?)覚え書き 第10回 -1-



アシガール・第10回 -1-「「その結婚ちょっと待った!」


第10回のストーリー


阿湖の身代わりとなって高山にとらわれた唯。それを聞いた若君・忠清は必死で探す。
企てを知っているらしい兄・成之と、ついに剣を合わせる忠清。
高山から、預かった阿湖=唯を跡取りの宗熊と結婚させるようにとの申し入れが。
絶体絶命の危機に唯は…。




無事、城に戻ってきた阿湖は地面に土下座した。

  • 忠清「姫、無事で何よりであった」
  • 阿湖「ご城下で曲者に襲われました」
  • 忠清「唯之助を供にしておったというのはまことか?」
  • 阿湖「はい。2人して身を隠しておりましたが追っ手が迫り、唯之助は私と着物を取り替えておとりに」
  • 忠清「おとり」
  • 阿湖「あまりに恐ろしゅうて私はその場を動けず、唯之助の行方もそのまま...」
  • 忠清「源三郎、太刀を持て!」
  • 小平太「すでに配下の者たちが探しております」
  • 忠清「どけ!! 馬引け!!!」


小平太を突き飛ばす。

  • 小平太「若君様! 若君様!」


あわてて後を追う小平太。


激情ほとばしる忠清は初めてか。

さらわれたと知って慌てふためく忠清。
感情を晒して馬を引けと叫ぶ忠清。
かっこよし。


小平太にも他の配下のものにも穏やかで優しかった忠清の、変貌!


阿湖はこのとき初めて、忠清が唯を愛していると知ったのだろうか。
もし自分がいなくなっても、こんなに必死に捜してはくれないだろう。唯之助だから必死なのではないか。


もう阿湖は、唯之助が男ではなく女だと知っている。


忠清の心が許嫁の自分には “ない” !!






早朝の黒羽城。
忠清が唯の捜索から戻る。
ひれ伏す阿湖。

  • 阿湖「忠清さま。お許しくださいませ。私が城を出たいと唯之助に無理を申したばかりに」
  • 忠清「もうよい。気に病まれるな」
  • 阿湖「もし唯之助の命が絶たれるようなことがあれば…」
  • 忠清「いや、それはあるまい。これが高山の仕業なれば曲者どもは唯之助のことを阿湖殿と思い込んでいるはず」


太刀を立掛け台に収める。

  • 阿湖「やはりご存知だったのですね。唯之助は、おなごにございます」
  • 忠清「さよう。名を唯と申す」


座った忠清は、立っている阿湖を見上げながら続ける。

  • 忠清「足軽のなりをし、戦でわしの命を守らんとする、たわけたおなごでござる」
  • 阿湖「忠清様を守ろうと…」


阿湖は唯之助を男の子だと思って話し相手にしてきたが、実は女の子だった。
驚いた阿湖が忠清に「おなごにございます」と告げたら、唯清メ、即座に「さよう」と肯定し、名前まで知っていた。


これは優しくないぞぇ。少しくらいびっくりしてみせたり、「そうかなと思っていた」とか、さ。


忠清は夜通しの捜索で疲れて、髪も乱れ顔色もよくない。
それなのに、唯のことを嬉しそうに笑って話している。「たわけたおなごでござる」なんて喜んで発表している。


忠清の着物に袴に朝日が当たり、爽やかに笑っている。…忠清メ。


敗北の阿湖。自分が結婚相手なのに、他の女のことを心配し、眠らず捜す新郎予定の人。


複雑な心模様の阿湖は…。





広い座敷。唯が一人食事をしている。

唯にはここがどこか判っていない。

  • 唯「あの〜、何度もお尋ねするようですが、ここはどこの、なんという場所ですか? 誰かのお屋敷?」
  • 嶋(侍女)「阿湖姫様、お済みになりましたらお呼びくださいませ」


そう話すと、大勢の侍女が頭を下げ座敷を出て行く。

  • 唯「やっぱ、阿古姫だと思われてるよ。違うとバレたらどうなるんだう」


困った顔で座敷を歩き回る唯。
昨晩に穴を開けた障子を覗く。
男がこっちを見ている。

  • 唯「座敷わらし!!」


障子を開けるととぼけた顔の男がいる。
唯が手を振ると男も手を振る。
唯は、飼い慣らしてきたと男に駆け寄る。

  • 嶋「阿湖様〜」
  • 唯「やばい、後でまたいろいろ教えて?」


唯を目で追う男は、高山の嫡男・宗熊だった。


置かれた状況は深刻だ。


ここで唯の力が見えてくる。


心は落ち着かなくても、しっかり食事をする。
誰かも分からない、とぼけた男にコンタクトをとる。
その男を信用して「後でいろいろ教えて?」と頼んだりする。


次の第11回山寺の一夜で…。
唯は忠清と語り合う。「私、長沢城でずっと思ってました。明日、死ぬかもしれない。明日、宗熊と結婚させられるかもしれない。何が起きるかわからない……」


次回でまた書くかもしれないが…。大げさな唯だと、つい思ってしまう。


しかし、全くそんなことはない。大げさどころか、「死ぬ」ことは日常なのだ。結婚は策略だし…。


高校生の唯の苦しみ恐れが、回を追うごとに強まってくる。


だが、……逞しいのだね、唯。






成之の母・久が住む庵
久に続いて忠清が入り、成之に一礼する。

  • 忠清「母御がご存命であったとは」
  • 成之「お尋ねになられませんでしたので」


忠清は阿湖が城下で襲われた話をする。

  • 忠清「兄上のお指図にございますか?」
  • 成之「なれば、どうされる?」
  • 忠清「居所を語ってもらわねばなりませぬ。姫の代わりに唯之助が連れ去られました」
  • 成之「なんと、ハッハッハッハ。羽木の若君様が、あの小娘にかくもご執心とは」
  • 忠清「お教え、いただけぬと?」


忠清を見る成之。

  • 成之「昔のことじゃ。側室の母と私は城から出され、しばらくして誰ぞに毒を盛られた。私の代わりに母が服し、倒れた」
  • 忠清「・・・・」


成之さん。尋ねられなければ、どんな大事なことでも言わないでいいのかい。ひねくれた心がにじみ出ているよ。


同じ殿の息子である成之と忠清の対比。


母の生まれた家柄の違いで、殿の扱いが天と地。
城内で不自由なくぬくぬくと大切に大きくなった忠清。弟のくせに総領だ。
幼くして城から出され、ひっそりと生きてきた成之。毒殺されようともした。ひねたくなるのも当然か。


「羽木の若君様が、あの《小娘》にかくもご執心とは」
成之は最初の出会いで、もう唯之助が女だと覚ったようだ。唯は、成之が忠清だと勘違いして、ドーンとぶつかっているものね。生身の体が当たれば性別は判るだろう。


小平太とは大違い。小平太は超鈍感だから、最後の最後まで判っていなかった。


小平太は細かいことは気にしない、真っ直ぐなところがいいところだ。剣の腕は群を抜いていて、忠清のよき相談相手でもある。忠清にとって小平太は、部下ではあるが兄のような、先輩のような存在だったかも。






兄と弟は、口論になる。

  • 成之「お前は なぜそのように、あらゆるものをたやすく手放そうとする? 教えてやろう。それは、なにひとつ己の力で手に入れたものではないからだ。ただ与えられた身を、それらしゅう生きてみせる。それがおまえだ」
  • 忠清「哀れなお方だ」
  • 成之「なんだと?」
  • 忠清「私への憎しみなら、私へ向ければよい。松丸の姫や唯を苦しめるよりほか手立てを知らぬとは。卑怯な者を、人は決して仰ぎはせぬ。兄上は人の上には立てぬ!」


忠清を外へ蹴り飛ばす成之。
庭にて刀を抜く二人は、激しく斬り合う。

  • 成之「唯之助ならば長沢城じゃ」
  • 若君「長沢! 高山の本城に!?」
  • 成之「阿湖姫でないと知れれば、どうなることやら」


皮肉っぽい笑みを浮かべる成之。


斬りかかる忠清。倒される成之。

  • 久「ああっ」


久の不意打ちをかわす忠清。

  • 成之「母上」


両手を広げて成之を後ろに庇う久。


とまどう忠清。


恵まれた地位に生まれ、自ら努力しないでも欲しいものは手に入る。「なにひとつ己の力で手に入れたものではない」「ただ与えられた身を、それらしゅう生きてみせる」。成之は忠清をこのように評価していた。


ここで初めて、成之の思っていることが明らかにされた。本音が出たから、闘い(兄弟げんか)が出来た。幼いころから一緒なら、星の数ほど、けんかしてきただろうに。

兄弟はけんかを経て分かり合える間柄になっていくのかもしれない。本当の剣、正に真剣だったことが大層危険ではあったが。


闘いをしたからこそ、成之は唯の居所を告げた。


忠清は成之を本当に斬ろうとはしなかった。斬れば斬れたが。止むを得ず刀を抜いたが、応戦はしても勝つ気はなかったのだろう。無駄なことだから。


「兄を慕い兄とともに黒羽を守りたい」
忠清の胸のうちはそうだったかもしれない。



(つづく)
 
  #アシガール #伊藤健太郎 #黒島結菜

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