(40)「ベニスの裁判官は血の気がない !?」
中学校の文化祭。
演劇部の演目に「ベニスの商人」がありました。
私は演劇部ではなかったのですが、人数が足りなくて応援出場でした。
台本を印刷したり、舞台の大道具・小道具を作ったり、準備がたくさんありました。
稽古をくりかえしてもうじき当日というところで、私は急病になりました。
入院して手術もしたので、みんなが心配してくれました。
『もう劇には出られない』と諦めました。
ところが、予後がまあまあで退院が早まりました。
少し痩せて、ちょっと危なっかしい足取りでフラフラと学校に行くと、
「わぁ、よかったね!」
「これなら出られるよね」
「・・・ えっ !?」
まさか手術直後の私が・・・!
「急だったでしょ。だから、代役を立てる暇がなかった」
「お願い、出て!」
と頼まれました。
つい、その気になって出場することにしました。
私の役は裁判官です。裁判官の衣装は兄の制服を借りました。前立てが隠しホックになっている、やたら格好のいい服でした。私にはブカブカで袖口を中へ折り込みました。丈は仕方ありません。長ランみたいです。
さあ、証文のとおりにするがよい
肉のみを切り取れ!
ただし、血を一滴でも流したなら……
なんとか無事に舞台を終え、衣装を着たまま校庭でみんなと撮った写真。
その中には、血の気のない顔の私がいます。
お医者さんには
「手術したばかりで、無茶だよ!」
と、しっかり叱られました。
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