アシガール・第4回「ドキドキの夜!」
第4回のストーリー
戦を体験した唯。
戦勝の夜に女形役者・あやめと知り合う。忠清の閨の相手がふきという娘だと聞いた唯は、姫の姿になって、ふきの代わりに忠清の閨に潜入する。
二人で語り合ううち、忠清は唯の率直なものいいに態度に笑みがこぼれる。
祝勝の夜。寺。
唯は戦の夜、女形役者のあやめと出会う。忠清の閨の相手が今夜訪れると聞かされ、その相手をでんでん丸で気絶させようと考える。
- あやめ「健気というか身の程を知らないというか…」
- 唯「身の程? 身の程ってなんですか? 本当にその人を思ったら、身の程とか、男とか女とか関係ないじゃないですか」
- あやめ「おう……」
- 唯「そりゃあ今の私は若君様に近づくこともできない足軽だけど、でもだからって他の女が気安く若君様に近づくのは嫌なんです」
- あやめ「気に入った」
- あやめ「あたしにいい考えがあるよ。姫に代わって、あんたが若君様の閨に行くんだ!」
- 唯「ええ〜!? え! え! 駄目ですよ」
太竿の音が「♪べんべん」と鳴ると転瞬、見張りの侍が倒れ、唯は姫に、あやめは侍女になっている。
このスピード感は好き。
戦国に行ってあやめと出会えたこと。あやめを信じて話を打ち明けたこと。
唯は、鋭く人を見抜く目を持っている。
灯りが揺れ風が通る寺の座敷。
やっと、やっと、潜入に成功した唯は、忠清と酒を注ぎ合い語り合う。
- 忠清「ふくは戦が嫌いか?」
- 唯「そりゃ、まともな人ならみんな嫌いですよ。誰だって、できるなら生まれて育ったところで一生懸命働いて、泣いたり笑ったり、楽しく暮らしたいなっーて」
- 忠清「そうだな。だがそのためには戦わねばならぬ」
- 唯「また戦を? 勝ったばかりなのに?」
- 忠清「それが定めじゃ。わしのな」
- 唯「嫌です……」
唯を見る忠清。
- 唯「私……。あ...……」
膝の上においた手を握りしめる唯。
庭を見る忠清。草木が揺れている。
横になり目を閉じる忠清。
- 忠清「よい風じゃ」
- 唯「ほんとだ。いい風」
忠清の横顔を見つめる。
- 唯〈 この人を戦で死なせる訳にはいかない 〉
「まともな人なら戦はみんな嫌い」という唯の言葉は、忠清には驚愕だったろう。
忠清は戦しか知らないのだから。
唯は平和しか知らなかった。
突然、閨に並べた布団を見てしまった唯は、激しく動揺する。
- 唯〈 どうしよう? 夢中でここまで来たけど急に恐くなった。今までデートどころか気になる男子すらいたこともないのに。いきなり、こんな…、こんな… 〉
- 唯「あの…、私…、あの…」
- 唯〈 おまけにずっと足軽やってたからノーシャワー、ノーシャンプー、ベリー汗まみれ! 〉
こそこそと下がっていく唯。
- 忠清「たわけ。そのように怯えておるおなごに何もせぬわ」
起き上がる忠清。
- 唯「若君」
- 忠清「そうじゃ。せっかく参ったのだ。歌でも詠じてみぬか?」
- 唯「歌? …で、ごじゃりますか? いや、それがしあの、はやりの歌などとんと…」
食い込み気味に忠清。
- 忠清「そうだなあ、穏やかでおおらかで安らぐ歌がよいな」
- 唯「穏やかでおおらか……。あっ!」
唯は咳払いをひとつ。
- 唯「では、失礼をばして」
- 忠清「うぬ」
- 唯「♬ おお 牧場は緑 草の海 風が吹く おお 牧場は緑 よく繁ったものだ♪ ホイッ!!」
いいなあ。選曲といい、灯りに映える唯の頬や澄んだ声といい、聴いている忠清の半開きの唇といい……。いいなあ。
唯をこのまま返したくない忠清は、必死で思いついたのだろう「歌を詠じてみぬか」と。なかなか巧緻であるぞ。
- 忠清「笑うたら、眠うなった」
- 唯「えっ?」
- 忠清「わしは休む。ふくも来るか?」
- 唯「ええ !?」
- 忠清「まだわしが怖いか?」
- 唯「いや…、いや…、こ、怖いっていうか、なんというか」
- 忠清「まぁ、よい。腹が決まったら参れ」
- 唯「えっ、ええっ。〈 何それ? 腹が決まったらって、腹が決まったらって 〉そんなの絶対無理ですから」
よろよろと部屋を出ようとする唯。
ふと戻って、眠っている忠清を見る。
- 唯「若君様。私…必ず、必ず守りますから」
礼をして去る唯。
目を開ける忠清。起き上がり微笑む。
- 忠清「面白い。……、ふっ」
つい・今・さっき・忠清は「怯えておるおなごに何もせぬ」と言ってたのに。
「ふくも来るか?」って。なにそれ!
やっぱり肉食系でごじゃりまするな。
唯は、天野家に正式に召し抱えられ小垣城を守る戦に加わる。
1000人の羽木軍に対して、高山軍は3000人。夜明けとともに高山軍は羽木軍に襲いかかってくるだろう。
- 唯「なんとかしなくちゃ、私が」
忠清を守るために考える唯。
- 唯「たかだか3000の高山軍など、なんとかなります。21世紀の科学の力でなんとかします。尊が!…… 若君様、少々お待ちを」
タイムマシンの起動スイッチを入れる唯。
「私がなんとかする」と言っていたのに!
えっ! なんとかするのは、唯ではなく尊ですか ! ?
(つづく)