♪ おもいで らんらん

♪ おもいで らんらん (55)「なかがき」

「おもいでらんらんランドセル」という題でメモを書きました。 わたしのランドセルは母の手作りで、世界に一つしかないということを書きたかったからです。 そうしたら、別のことがするするっと出てきました。 父は何でも作ってくれる家のリーダー 恐くて優…

♪ おもいで らんらん (54)「ときのとおり」

(53)「ときのとおり」 向こうから来て私とすれ違った母 その瞬間 私は母のこどもになりました 母は「これから若くなっていく通り道」のようです 前を向いて勢いよく歩いています 母は未来ではなく 今まで自分の歩いてきた道をどんどん若くなって進んでいま…

♪ おもいで らんらん (53)「 “弟” のケンタくん」

(53)「“弟” のケンタくん」 私がまだ幼稚園に通っているころ、親戚のケンタくんが私の家に住んでいたことがありました。私の2歳くらい下でした。 初めてケンタくんが来たのはもう暗くなる時間で、みんなでうどんの夕食を食べていたときです。 ケンタくんを…

♪ おもいで らんらん (52)「シンデンのおじちゃん、おばちゃん」

(52)「シンデンのおじちゃん、おばちゃん」 シンデンさんは、父が勤めている会社の守衛さんです。 会社に遊びに行くと、守衛所の窓越しに 「よく来たね」 と、まん丸眼鏡で迎えてくれます。 門を抜けてまっすぐ進むと四つ角があり、右に曲がってしばらく歩…

♪ おもいで らんらん (51)「何かがあるから 旅は面白い」

(51)「何かがあるから 旅は面白い」 私の高校は自由な雰囲気を持っていました。 修学旅行は、生徒たちで旅行委員会を作り訪問場所をいくつか選び、投票で決めました。 旅の三日目。船で湖を渡ったところのホテルが宿泊場所です。 それまでも雨が降っていま…

♪ おもいで らんらん (50)「母と和服」

(50)「母と和服」 母は和服が好きでした。 そして、洋裁よりも和裁の方が好きだったと思います。 暮れのバタバタが済んだ夜、箪笥の特別の段から着物の入った細長い箱を取り出します。蓋を開けると、たとう紙が現れます。そこには筆文字で「御誂」と書いて…

♪ おもいで らんらん (49)「私の机」

(49)「私の机」 中学2年ごろ、初めて自分の部屋と自分の机を持ちました。 「部屋」と言ってもとても小さく、一畳の広さもありません。座敷に付いている「床の間」部分だったからです。 座敷より10センチくらい高い床でした。 座敷側から見て左側に木製の机…

♪ おもいで らんらん (48)「母ひとり子ひとりのカナちゃん」

(48)「母ひとり子ひとりのカナちゃん」 高校時代、圧倒的に友だちの少ない私にできた大事な人。 カナちゃんは人と付き合うのが上手でした。一人でいることが多い私にもよく話しかけてくれました。しかも私の話をよく聞いてくれました。 勉強が好きな人でし…

♪ おもいで らんらん (47)「交換ノートの相手」

(47)「『交換ノート』の相手」 チーちゃんとは幼稚園が一緒でした。近くに住んでいたので、チーちゃんの弟や妹とも遊びました。小学校に入る前、チーちゃんの家は引っ越しをしました。私は、それきりチーちゃんのことを忘れました。 ところが、高校生にな…

♪ おもいで らんらん (46)「大きくなったら本屋さんの店員になる!」

(46)「大きくなったら本屋さんの店員になる!」 夢がコロコロ変わる年ごろに、そう思っていました。 文字が読めるようになったのが嬉しくて、絵本だけではなく新聞の小さいひらがなも見つけました。電車に乗ると大声で駅名を読みました。 小学校に入ると、…

♪ おもいで らんらん (45)「ままごと遊びの道具」

(45)「ままごと遊びの道具」 ままごと道具は、茶碗、椀、皿、盆、箸、まな板、包丁・・・。 そして、一番大事なのは「板」。 無理すれば子どもが4人座れるくらいの長板です。 これは私にとって必須でした。 板がないと、おままごとにならなかったのです。…

♪ おもいで らんらん (44)「夏休みの宿題」

(44)「夏休みの宿題」 小学1年の7月。 夏休みに入ったばかり。 縁近くの座敷に寝転んで雲を見ていました。セミの声が聞こえます。 1日は長く夕方はまだまだです。いつまでも時が進まず、果てしなく夏休みが続くと感じていました。だって40日以上あるのだか…

♪ おもいで らんらん (43)「つけて三つ、つけないで三つ」

(43)「つけて三つ、つけないで三つ」 近くにパン屋さんがありました。 小さい頃、そこへお使いに行くときは、 「つけて三つ、つけないで三つ買ってきてね」 と、母に言われました。 「つけ」といっても「付け」で買うのではありません。 お店では、おばち…

♪ おもいで らんらん (42)「お蕎麦屋さんのお嫁さん」

(42)「お蕎麦屋さんのお嫁さん」 近所のお蕎麦屋さんは、おじちゃんもおばちゃんも信州が故郷です。 私の家では、お店で食べることはあまりありません。 ふだんは、「生そば」と「つゆ」を買うのです。 小学校一年の頃は、出汁の匂いのする厨房に入りこん…

♪ おもいで らんらん (41)「ボート部員のお尻」

(41)「ボート部員のお尻」 父の弟のマサおじさんは、大学生のときボート部でした。 ボートが好きで就職してからは企業のボート部に入りました。 ときどき練習の後、私の家に来て泊まります。 私が幼稚園生だったころ、襖を開けて部屋に入ったらマサおじさ…

♪ おもいで らんらん (40)「ベニスの裁判官は血の気がない !?」

(40)「ベニスの裁判官は血の気がない !?」 中学校の文化祭。 演劇部の演目に「ベニスの商人」がありました。 私は演劇部ではなかったのですが、人数が足りなくて応援出場でした。 台本を印刷したり、舞台の大道具・小道具を作ったり、準備がたくさんありま…

♪ おもいで らんらん (39)「遠足の前の日」

(39)「遠足の前の日」 母は洋裁が好きでした。 遠足の前の日までは、どんな服を着て行くのかわかりません。私が寝るまで母は別の仕事をしていました。私が寝てから、やっと服作りを始めるのです。 デザインを決めて布を買って型紙を作って裁断して・・・と…

♪ おもいで らんらん (38)「祖父の背中」

(38)「祖父の背中」 母は18歳で父と結婚し、19歳で私の兄が生まれました。 母の父、すなわち私の祖父には、私が学校に上がる前にお年始に行ったとき初めて会いました。家が遠くてなかなか会えなかったからです。 ある日、その祖父が突然!私の家に来ました…

♪ おもいで らんらん (37)「クミ・マリ・ケー・ピー!」

(37)「クミ・マリ・ケー・ピー!」 私と同い年のクミちゃんは四人姉妹です。 一番上のクミちゃんが小学一年、間に二人いて一番下のピーちゃんは赤ちゃん。クミちゃんは体が大きくて、下の子たちの服の世話、ご飯の世話、ピーちゃんのおしめ取り替えもして…

♪ おもいで らんらん (36)「お風呂のおばちゃん」

(36)「お風呂のおばちゃん」 小さい頃は、家にお風呂がありませんでした。 父の会社のお風呂に入りに行きました。裏門の近くにお風呂があったので、裏門の守衛さんに挨拶をして入ります。従業員用のお風呂なのですが、毎日、家族用の時間を設けていました…

♪ おもいで らんらん (35)「凸凸堂の皆さま」

(35)「凸凸堂の皆さま」 後に、近所では有名な菓子司になる建物が建築中のことでした。 小学校1年生か2年生の私は4、5人の友だちと徒党を組んで、大工さんが休みの日にその建物に忍び込みました。建築途中だから、柱と梁と荒壁、そして床板、1階の天井部分…

♪ おもいで らんらん (34)「拝啓 ミソ先生」

(34)「拝啓 ミソ先生」 私が学校へ上がる前、ミソ先生は兄の受け持ちでした。 住んでいるところが近かったし、そのころは独身でもあったので、私の家へよく遊びにきてくれました。 先生はバレエをずっとやっていたそうで、幼稚園生の私にお遊びでポジショ…

♪ おもいで らんらん (33)「百人一首を覚えたころ」

(33)「百人一首を覚えたころ」 お正月になるとコタツの上に百人一首の札が並ぶ家で育ちました。 父も母も子どものときから百人一首をずっと楽しんでいたそうです。それぞれに得意札があり、上の句の文字、一つ、二つ、三つが読まれた瞬間にパッと札を飛ば…

♪ おもいで らんらん (32)「年の暮 お煮しめ・凧」

(32)「年の暮 お煮しめ・凧」 学校に上がる前の私がしていた仕事は、庭の隅の流しで蒟蒻に切れ込みを入れること。 小さい包丁を使い短冊に切った蒟蒻の真ん中にスッと切れ目を作る。それがいっぱいできたら、切れ目に指を入れてクルッとひっくり返す。 お…

♪ おもいで らんらん (31)「クリスマスケーキを作る」

(31)「クリスマスケーキを作る」 クリスマスが近づくと決まってケーキ作りをしました。 近所の仲の良いお母さんたちが集まります。ケーキ型はそれぞれの持ち寄りだったと思います。 私たち子どもも仲間入りです。とはいえ、大きい子たちはメレンゲなどの手…

♪ おもいで らんらん (30)「お気に入りコートが変態 !?」

(30)「お気に入りコートが変態 !?」 もうすぐクリスマスのころ、母と二人で銀座の展示会に行きました。外は寒かったけれど会場は明るく暖かでした。 展示を見ていると、テレビカメラを抱えた人やマイクを持った人たちが寄って来ました。 「今日のニュース…

♪ おもいで らんらん (29)「勉強して大学に行くんだよ」

(29)「勉強して大学に行くんだよ」 坂の途中に知り合いの家がありました。 短いトンネルを抜けて坂を登ると、道の左脇に階段がありました。その階段を上ったところの家でした。 広い玄関から廊下が続き、左に居間、右が洗面所やお風呂、まっすぐ進むと食事…

♪ おもいで らんらん (28)「七五三のお参り」

(28)「七五三のお参り」 小学一年生の私はセーラー服を着ていました。 母の手作りでした。 「セーラーカラーは難しいのよ」 と、母は言いながらアイロンをかけました。 「襟の角がきちんとできないと『全部やりなおし!』って、なるの」 そんなことも言い…

♪ おもいで らんらん (27)「父は、本当は……」

(27)「父は、本当は……」 冬の夜。 父は私たちが眠るころ布団のところへやってきました。布団の足元まわりを何カ所かギュ〜っと抑えて、隙間から暖かい空気が外へ出ないようにしてくれました。そうしてもらうと安心して眠れました。 冬の朝。 私の服をコタ…

♪ おもいで らんらん (26)「ミュージカル『お山の奥にあったとさ』」

(26)「ミュージカル『お山の奥にあったとさ』」 幼稚園のときにミュージカルというか、ちょっとした音楽劇をしました。 ♪ お山の奥にあったとさ♪ 歌い踊りながら始まります。 ♪ 一軒お寺があったとさ ♪ 住んでいるのは和尚さん一人 ♪ 和尚さんの友だち だ…