(32)「年の暮 お煮しめ・凧」
学校に上がる前の私がしていた仕事は、庭の隅の流しで蒟蒻に切れ込みを入れること。
小さい包丁を使い短冊に切った蒟蒻の真ん中にスッと切れ目を作る。それがいっぱいできたら、切れ目に指を入れてクルッとひっくり返す。
お煮しめの下ごしらえです。
父や兄たちは障子を外して洗ったり、天井の汚れを払ったり。
そうそう、凧を作りました。
三畳間くらいの大きさの凧。
いや、ずっとそう思っていたけれど考えるとその半分くらいかも。あれ? もっと小さかったのかな?
いずれにしても座敷にいっぱいだと感じたくらいの大きい凧でした。
父と兄二人が手分けして作っていきました。
座敷に新聞紙を並べて敷く。割った竹の棒を縦と横と斜めに組み合わせて糸でしっかり結ぶ。和紙を何枚も並べて糊で貼る。
大きい凧は糸が大変だったと思いますが、あまり覚えていません。
そういえば父と兄が太い筆でだるまの絵を描きました。
座敷にドカンと置かれた凧は堂々としていました。
私は凧揚げをする日が楽しみで、座敷に寝ている凧のまわりを走り回って、
「危ないよ!」
と叱られました。