(43)「つけて三つ、つけないで三つ」
近くにパン屋さんがありました。
小さい頃、そこへお使いに行くときは、
「つけて三つ、つけないで三つ買ってきてね」
と、母に言われました。
「つけ」といっても「付け」で買うのではありません。
お店では、おばちゃんとお姉ちゃんが、その場で食パンの間に大きなヘラでジャムとかマーガリンとかピーナッツバターを塗ってくれます。
それが大サービスのたっぷり厚塗りなんです。
初めはきっと全部のパンに塗ってもらっていたのだと思います。そのうち母は、あまりつけているものが多すぎると考えたのでしょう。
家に帰ってから、「つけた二枚のパン」を、「何もつけない二枚のパン」と合わせる方法に変えました。ジャムやマーガリンやバターは、そのくらいの量でちょうど良かったのです。
つけた三組のパンがつけない三組と組み合わさるから、全部で六組の「つけたパン」になります。
さらに、つけたパンとつけないパンは値段が違っているから節約もできます。
六組のつけたパンをサンドイッチのように三角切りや四角切りに分けます。
ジャムもマーガリンもピーナッツバターも、みんな好きに選んで食べました。
「つけて三つ、つけないで三つよ」
わぁ、口の中にあの甘いとろける味がいっぱい!