(41)「ボート部員のお尻」
父の弟のマサおじさんは、大学生のときボート部でした。
ボートが好きで就職してからは企業のボート部に入りました。
ときどき練習の後、私の家に来て泊まります。
私が幼稚園生だったころ、襖を開けて部屋に入ったらマサおじさんはうつ伏せに寝て父に薬を塗ってもらっていました。
「イタッ! イタッ! イタ〜ッ!」
と、大声。
お尻は真っ赤っ赤。強くボートを漕ぐとお尻の皮がめくれてしまうのだそうです。
「ほら、ほら、動くな!」
と、父はなだめながらも楽しそうです。
薬をつけるときも、座るときも、お尻をタオルで拭くときも大騒ぎです。
練習を見に行ったことがあります。
長い水路に細長いボート。
たくさんのボートが、ミズスマシみたいに水面を滑っていました。
おじさんは会社に勤めていましたが
「やっぱり空の下で働きたい」
と、植木屋さんになりました。
体が大きく丈夫で、高いところに登ってもバランスがよく、
「植木屋はオレの天職かもしれない」
と言っていました。
「お客さんから『庭をきれいに造ってくれてありがとう』と言われるのが一番うれしいよ」
好きなことを仕事にしたマサおじさんは楽しそうでした。