(45)「ままごと遊びの道具」
ままごと道具は、茶碗、椀、皿、盆、箸、まな板、包丁・・・。
そして、一番大事なのは「板」。
無理すれば子どもが4人座れるくらいの長板です。
これは私にとって必須でした。
板がないと、おままごとにならなかったのです。以前は何かに使っていたものらしく、ちょっと変な形をしていて、端の方にガリガリしたキズがありました。
私には大切なものでしたが、考えてみると変です。
「板」なしでもおままごとは出来ます。自分の家なら縁側があります。草っ原ならそのまま草の上で出来ます。大きい布を広げるのもありです。
それなのに「板」……。
家の庭で遊ぶときは、ちょっと運べば使えました。
友だちの家なら引っ張って運び、お気に入りの橋のたもとならそこまで、もっと別の場所でもずるずるずるずると運びました。ままごと道具を袋に入れて背負い、板を手に出発です。小学校一年生が一人で運べるくらいの重さでした。
目的地に着き板を設置し、友だちが集まったら役割を決めます。
お父さん、お母さん、子どもたちです。お母さんは競争率が高くてジャンケンで決めていました。
お母さんは一番命令が出来ました。板の一番端っこに座り、
「野菜を買ってきてね」
と頼んだり、
「今日はお肉ですよ」
とか言います。
ご飯はジュズダマや、ギシギシの細かい実をしごいて落としたり、アカマンマの赤い小花を集めたりしました。アカマンマが一番美味しそうに見えました。
本当に口に入れたのは「ガム」と呼んでいた細い葉っぱの先っぽの白い穂です。その頃は「ガム」という名前しか知りませんでした。まだ緑に包まれた柔らかい穂を摘んで口に入れます。すると、少し甘くて、まるでガムを噛んでいるようでした。
これはご馳走になるので、
「おやつはガムですよ」
とお母さんが言うのを楽しみにしていました。
今、調べてみたら「ガム」は、「チガヤ」というイネ科の植物だったのを知りました。
本当に口に入れたもう一つは「スカンポ」です。ちょっと酸っぱくて水気がたくさんあります。美味しくはないけれど食べられるから、おままごとの中では人気でした。
お母さんは洗ったり切ったり煮たりしてから
「ご飯ですよ〜」
と、みんなを呼びました。
遊び終わって道具をしまい、板を引っ張るとき私は満ち足りていました。
友だちと一緒に運んだときもあります。
一人でも十分運べるし、ちっとも大変ではありません。
喧嘩になって、少し泣いて帰るときも板を運んでいるうちに泣き止みました。
たぶん「板」は私の中で「家」だったのではないでしょうか。
「家がなければ家族と呼べない」
「家がなければおままごとにならない」
と、頑なに思い込んでいたあの頃。
♪ おもいで らんらん[もくじ] - 那須高原のとっておき!