(28)「七五三のお参り」
小学一年生の私はセーラー服を着ていました。
母の手作りでした。
「セーラーカラーは難しいのよ」
と、母は言いながらアイロンをかけました。
「襟の角がきちんとできないと『全部やりなおし!』って、なるの」
そんなことも言いました。
カラーに白いラインをいれるときも、くっついて見ていました。
「これはね、きれいな一本線になるように息を止めて角までミシンをかけるのよ」
一緒に息を止めると雨の音がしました。
出来上がったセーラー服は学校の制服でもなんでもなく、七五三のための衣装でした。
お祝いの日、近くの氷川神社に行きました。
神主さんのご祈祷がありました。祝詞を読んでくれました。いくつもの家族が一緒に受けるのではなく、母と二人だけのご祈祷でした。
少し離れたところには、次の七五三の人たちが待っていました。中には知っている子もいました。
祝詞の声がして、白い紙がふさふさついた棒が頭の上を行ったり来たりしました。おかしくなって知っている子を見たら、やっぱり笑っていました。
そういえばセーラー服だけではなく、兄たちの学生服も母の手作りだったと思います。
母は、手だけは魔法使いでした。