(18)「透きとおった海・透きとおったところてん」
母方の親類の家は海のそばでした。
小さいころ、夏には決まって行きました。
歩いて数十歩で、もう海!
背の立たないところまで泳いでも、海の底が透きとおって見えます。
少し沖に出ると、潮の流れが速くなるので、
「危ないからね」
と、父は私の近くで泳いでいてくれました。
あるとき、泳いでいる人の中に知った顔を見つけました。
「えっ!」
「なんで!」
お互いに言い合いました。
それは父方の従兄弟でした。
家に戻ると、おばちゃんはいつも
「ところてん作ろうかね」
と言います。
私は急いで広い台所に行きます。おばちゃんは巨大鍋に水を張り、下ごしらえした天草を入れます。鍋が大きいから煮立つまでも時間がかかります。おばちゃんは吹きこぼれないように見張っています。
ずいぶん長い間煮るから私は飽きてしまって、座敷にもどり従姉妹の赤ちゃんと遊んでいました。それからまた台所に行ってみるとおばちゃんは煮終わった天草を布で漉していました。
型で固めて冷やして、時間をかけて作ったところてん。
透明のガラスに入れた山盛りのところてん。
とびっきりのご馳走でした。
ガラス戸も障子も全部開け放して、庭の見える座敷にみんなで寝転びました。焼けた皮膚がひりひりしました。
体に残った波が押し寄せてきて、一人静かに揺れました。
それからずっと経って……。
親類の家は人気の海岸に人気の「海の家」を開きました。