アシガール・第5回「走れ!初デート」-1-
第5回のストーリー
唯は忠清を救うため弟の尊の作ったグッズ「まぼ兵くん」を持って戦国へ。
足軽「唯之助」として奮闘し、忠清の「御馬番」となる。
ある日、忠清から初デートに誘われる。
忠清は高山との和議の場で、陰謀に巻きこまれ……。
夜明けと共に1000対3000の戦が始まった。
ひとり敵陣に馬で向かう忠清。
- 唯「こうしちゃあ、おられん」
鉢巻きをし忠清を追う唯。
- 唯「若君様ぁ」
- 忠清「留めだて無用!」
- 唯「私めをどうぞお供させてくださいませ!」
- 忠清「お前、名前は?」
唯のしつこさに、うんざりした顔の忠清。
- 忠清「では、唯之助」
- 唯「しゃっ! 名前覚えてもらえた」
- 忠清「我が身をもって先陣となし、敵陣に駈け入って思う存分ひっかきまわす!」
- 唯「私に策がございます。どうせなら立木山まで一気に駆け抜けませんか? 山まで敵をおびき寄せ、目に物見せてやるんです!」
- 忠清「大きゅう出たな。よい、気に入った」
馬のいななき。
- 唯「っしゃーっ!」
馬上の忠清と並び走る唯。
馬より速く(ではないが、ほぼ並んで)走る唯。
これが初デートといってもいいくらい(違うけれど)。
ここからグングンと第1回「見参!戦国女子高生」へリンクしていく。この構成の素晴らしさ!
絵図面の上。
敵を示す黒い陣形。若君を守ろうと、でんでん丸で戦う唯。
二人の進撃を示すちびた赤鉛筆。
勇ましい戦いが展開する。
戦う兵は全く出てこないが、不思議なことに唯の声と敵兵の声で十分楽しめる。
唯は忠清が手に怪我をしているのに気づいて手当をする。
ふたりの顔が近づいたとき、顎クイをする忠清。
- 忠清「ふく…」
- 唯「えっ?」
- 忠清「お前…ふくか?」
- 唯「〈 まずい 〉いえ…〈 女とばれたら戦のとき近くにいられなくなる 〉ふくとは、何のことでござろうか」
キリッとした顔を作る唯。
- 忠清「...気のせいか。…お前には姉妹がおろう?」
- 唯「いません。ふくなんて変な姫はいません!」
- 忠清「…え?」
あわてて顔をそむける唯。
- 忠清「お前は…」
唯はあくまでも忠清の近くにいたい。忠清を守りたい。
女であることよりも、守りたい気持ちの方が高い。唯のぶれない意思の強さが感じられる。
忠清はふくと名乗るあの夜のおなごに興味を持っているから、必死でふくを探している。
ふくが唯であって欲しい!
忠清の居室。
小平太が歌を詠みあげる。
- 小平太「黒髪の乱れも知らず待つほどに 日々匂うぞや蠅の来たらん」
ふきの部屋のシーンが挿入される。
- [ふき「黒髪が乱れることもなくあなたを待っていると、我が身が匂ってきたのでしょうか、蠅がたかってまいりました」]
なんともいえない顔をして忠清は立ち上がり、去る。
- 小平太「若君様ぁ」
「ふき」と「ふく」が入れ代わった登場は、忠清にも小平太にも、当のふきにも、まだ謎のまま。
微妙な立場のふき。
側室としてお城に呼ばれたんじゃないの?
というか、忠清が自分で呼んだんじゃないの?
どうする、忠清!
なんだか、ふきも応援したくなる。…ガンバレ!?
忠清はふきの歌で何かを思い出したように立ち上がるが、この後デートに誘うんだね、唯を。ふきの歌は1つのきっかけを作ったのでないか。
忠清は唯を遠乗りに誘う。「初デートだ!」と、喜ぶ唯。
疾風(馬)の後ろを駈け続ける唯。
- 忠清「どうした? 疾風はまだまだ駆けたがっておるぞ」
楽しげに意地悪を言う忠清。
- 唯〈 ま、若君様が楽しそうだからいっか 〉
草原に座るふたり。
- 忠清「そうじゃ」
懐紙の包みを唯に渡す。中に花の形の小さなお菓子。
- 唯「うわぁ!」
- 忠清「食せ。それも兄上からいただいたものだ」
ひとつ食べる。
- 唯「うん! あま〜い!」
ほんとに初デートだ。気に入りの女の子に気に入りのプレゼントをあげる。食べている姿をニコニコして眺める。
たがいに、故郷や母や兄や弟のことなどを聞き合う。
身の回りのことや家族のことが聞きたくなったら、それは恋。
だって興味のない人にまつわるエトセトラなんて、聞く気にならないだろうから。
日の輝く草原。
忠清は唯に和議について話す。
- 忠清「高山とは和議を結ぶことになった」
- 唯「よかった」
- 忠清「あれほど羽木の領地を侵そうとしていた者らが、いとも易く和議に走るとは、いささか腑に落ちぬのだが」
- 唯「でも和議はしなくちゃダメですよ」
唯を見る忠清。
- 忠清「そう思うか」
- 唯「思います! 戦になったらまた誰かが死にます。死んだらその人だけじゃなくて、悲しむ人が大勢増えます」
- 忠清「お前ならそう申すと思っていた。…… 和議にはわしが行く。兄上の勧めもあってのう」
忠清は難しい和議の道を選ぶことを、どうしても唯に言いたかったのではないか。唯から「和議は大切だ」と賛成の言葉を聞きたかったのではないかと。
それはまた、唯=ふく、であることの確認でもあったのだろう。
(つづく)