♪ おもいで らんらん
(1)「世界にひとつのランドセル」
母は洋裁が好きでした。
私が小学校に入学するとき、ランドセルを作ってくれました。カーキ色よりちょっと黄色が濃い、厚手のしっかりした生地でした。みんなが持っているランドセルと形も大きさも使い勝手もほとんど同じです。しかも軽い。私は毎日、それを背負って登校しました。
大きく違っていたのは、男の子は黒、女の子は赤のランドセルが多いなか、私のは黄色でした。背中のところには赤と白のチューリップのアップリケがありました。茎も葉もしっかりついていました。
上靴いれもランドセルと同じ生地。そしてランドセルよりも少し小さなチューリップが縫い取りしてありました。
ランドセルはずっと私の背中にありました。いつのころからか、友だちと違う仕様のランドセルに違和感を覚え出しました。確か5年生のころ、今度は父がランドセルをリニューアルしてくれました。背負うベルト部分をはずして大きくつなげ、肩掛け鞄のようになりました。その形で小学校卒業まで通いました。
思えば “世界にひとつだけのランドセル” だったのだなあと。
大人になって、ひとりだけ人と違っていてもやってこられたのは、ランドセルのお陰だったかもしれません。