♪ おもいで らんらん (12)「ポン菓子屋のミッちゃんがいなくなった」

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(12)「ポン菓子屋のミッちゃんがいなくなった」

ミッちゃんはおかっぱ頭の女の子です。

小学校1年の頃、私と同じクラスに転校してきました。

 

「ミッちゃんの家はどこ?」

と聞いたら、私の家の2本向こうの道にある家でした。元からそこに住んでいる人たちがいて、その離れの建物にミッちゃん家族が住み始めたみたいです。それから一緒に遊ぶようになりました。

ミッちゃんのお父さんはポン菓子を作る人でした。

土間に機械を出して、お客さんが来ると機械にお米を入れます。ネジのようなハンドルのようなものをギュッギュッと閉めて少し待ちます。お客さんのほかに見物人もいっぱいいます。

しばらくして

「ポンッ!」

とすごい音がしてお菓子が焼き上がります。「ポンッ」というよりも私には「バァンッ!」と聞こえました。

まわりで見ている人たちは何度も聞いて知っているのに、驚いて後退りします。ミッちゃんと私も繋いでいた手をいつもギュッと固くします。

ミッちゃんのお父さんは大きい入れ物に爆ぜた米を入れ、それからシロップをかけます。注文した人は出来上がったポン菓子を袋に入れてもらって帰っていきます。たいていのときは次の人が待っていました。

見物人はまた周りに集まって次の「ポンッ」を待ちます。


せっかく仲良くなったミッちゃんは、越してきたばかりなのに本当にまたすぐいなくなってしまいました。先生には話したのかもしれませんが、子どもたちは何も知りませんでした。

「いなくなっちゃったよね」

「ミッちゃん、どうしたんだろうね」

と話したりしました。


ミッちゃんの家に行ってみると、離れの家がそのままありました。もう人はいませんでした。ポン菓子の機械もありません。土間はがらんとしていました。

 


きっと急なことがあったのね、ミッちゃん。

新しい学校に行っても仲良しができるといいね。