アシガール・最終回 -9-「若君といつまでも!」
黒羽城。
忠清が一人廊下を行く。
- 唯「若君」
振り向く忠清。
- 唯「ここ。ここ、ここ」
庭の物陰で手招きする唯。
足軽の着物に頬かむりをしている。
庭に降りる忠清。
- 忠清「姫は何をしておいでじゃ?」
忠清の前に正座する唯。
- 唯「私、どうしても聞いてほしいことがあって」
- 忠清「いかがした?」
- 唯「結婚したら、立派な奥方になるよう一生懸命勉強しますし、おとなしくするし、いろいろ束ねたりしますけど。戦のときは一緒に行きますから。結婚に浮かれてうっかりしてたけど、わたしの一番の願いは、若君の命を守りぬくことなんです。結婚するのと、守るのと、どっちかひとつっていうなら、奥方になったら、戦は駄目って言われるなら、わたし、結婚っていう形にはこだわらない」
初めてこの回を観たとき、忠清の「姫は何をしておいでじゃ?」に、やられた。
だって「 姫 ♡」って、呼びかけている。
ずっと、互いに互いを何と呼んでいるか、興味を持っていた。
唯 → 若君・若君様・忠清様・兄上(長沢城で兄と偽ったとき)
唯のほうは、バージョンが少ない。圧倒的に「若君」が多い。
忠清 → 唯・お前・小僧・そなた・ふく(ふきと偽ったとき)・唯之助・妹(妹と偽ったとき)・阿湖(阿湖と偽ったとき)
忠清は「お前」と呼ぶのがダントツに多い。「そなた」と言ったときは少しドキドキした。ふたりが、同じ高さにいる感じがしたから。
「姫」と呼ぶのは凄い! 同じ高さを超えて、尊敬が見える。大切さが見える。
実際のこの場面は、監督から「ネコに話しかけるように」と教えられたという。
忠清が、ネコに対し尊敬の念を持ったかは定かではないが。
「砦」 ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)パンフより
(つづく)