「アシガールSP」-16-
超時空ラブコメ再び
(放送日 2018年12月24日)
現代。
唯の家のベランダに坐ったふたり。
月を見上げる。
忠清「何とも不思議なものじゃ。つい先夜、黒羽城で見上げておった月と同じに見えるに、これが450年後の月であるとは・・・」
忠清の腕をつかむ唯。
唯「私、嫌ですから。遠く離れたまま、若君が生きてるかどうかも分からないのは、もう絶対嫌ですから」
唯を見つめて微笑む忠清。
ふたりは寄り添って眠ってしまう。
風呂上がりの「ベランダでぇと」。
半袖、靴下の忠清。
長袖、素足の唯。
少し濡れた髪。
肩に掛かるタオルが、デートっぽい(?)。
思うことは様々でも、ふたりの寝顔は、今ふたりでいることに安心しているようだ。
高校の帰り道。
忠清を見つけ、自転車を止める唯。
黒羽城で石垣に触れている忠清。
近づく唯。
忠清「己の墓を見てまいった」
唯「お墓…」
忠清「我らはあの日、死んだことになっておるのだな。それでよい」
歩き出す忠清。
背中に抱きつく唯。
忠清「唯…、案ずるな。わしは どこへも行かぬ」
自転車を押し忠清の後ろを行く唯。
急に、唯が止まる。
振り返る忠清。
忠清「いかがした?」
唯「若君。次の満月で戦国に戻りましょう。羽木のみんなのもとへ」
忠清「ならぬ。羽木に、もはや城はない。 そのような所へお前を連れてまいるわけにはゆかぬ」
唯「だから行くんじゃないですか。私は最初からそのつもりでした。ふたりで戦国に戻って、私は一生、若君のそばで若君を守るんだって。だから今のうちできるだけいろんなことをして、いろんな所に行って、若君にたくさんのものを見せてあげたいと思って」
忠清「制服でぇと… には、そのような深淵な意図が…」
唯「あっ、いえ。あれは、まあ、そのような…」
唯「私、若君を守りたいってずっと思ってきました。でも、守るって若君の命だけじゃないんです。若君の大切な人たちも守るってことなんです。羽木の人たちを幸せにするのが総領の役目なら、若君の本当の幸せはあの場所にしかない」
忠清「唯……」
唯「戻りましょう、一緒に。羽木のみんなのもとへ」
唯の頬を摘まむ忠清。
唯「へっ?」
笑う忠清。
忠清「ついてまいれ」
自転車をこぎだす忠清。追いかけて走る唯。
唯「若君様~」
唯の決意表明。
唯は揺らぎが無い。
初めて出逢ったときから、ぶれずに忠清を護っている。
戦国の世でも現代の世でも、ふたりが一緒に生きるということには変わりがないように思える。
唯が現代で父母弟友たちと同じ世界で生きるという考えもあるのではないかと思っているが。
だが唯は、忠清の「総領として生きていきたい」という願いを叶えようとする。
唯は自分の考えの上に「忠清の願い」を置く。
かつて(今もあるが)「嫁に行く= 男の住まいに行く」が、まかり通っていた。
女性は生まれ育った故郷を離れて、知らない土地に向かう。
知らない人々の中で、知らない家族の中に入る。知っているのは相手の男性のみ。
男女を取りかえて、婿に行くことを考えてみると「小糠三合あったら婿に行くな」なんてことわざがある。
男性は自分が「婿」になることは、全然全く金輪際考慮しない人が多数派だろう。
しかし、唯はその上をいく。
唯にとって忠清の父、兄、家来、領民は、もう知らない人たちではなくなっている。これは、唯の功績でもある。どこにいっても、愛される行いをしてきた。
また、忠清は、唯の家族に尊敬される行動をしてきた。
もし、現代に生きることを選んでも彼なら唯を大切にし、100%生きていけるだろう。
その上での、唯の決意表明。
(つづく)