アシガール・最終回 -6-「若君といつまでも!」
- 唯「若君!」
唯〈 この人の命、初めて会った時より何倍も何万倍も大事なものになってた 〉
唯の頭を支えて床に寝かせる忠清。
目をとじる唯。
唇を近づける忠清。
- 源三郎「若君様」
目を開ける唯。
- 唯「えっ? ええ~っ!」
- 忠清「何じゃ?」
- 源三郎「殿が戦の子細を伝えよとお待ちにございます」
- 忠清「そうか、いま参る」
廊下を行く忠清を、目で追い一礼する唯。
「するする詐欺!」のお時間で~す。
忠清が唯を床に寝かせるシーン。 (オーディオコメンタリーのつづき)
黒島「ここね。いいですね」
伊藤「テストのときに(唇を)近づけるじゃないですか。こうやってここを…。〈 や、もう付くでしょう。やばい! 付く! 〉。でも止まらないから…」
黒島「うん」
伊藤「ちょっと止まっちゃったら、監督が『もう、ちゃんとしっかり “する” くらいの勢いでいって!』。〈 いや、もう付きます 〉と思いながら…」
黒島「(源三郎が)呼び止めるタイミングと、付くか付かないかのね」
キスを「する?」「しない?」は、本当は些細なことに思えて仕方ない。
キスは愛情表現の中のたった一つに過ぎない。
愛は、どんな形をしていてもそれが本物なら伝わる(といいね)。
むしろ、キスをしなかったからこそ激しく高まる心の動きが感じられる……。
といってもさ、ハグはあったし。
キスと同じくハグもなかったら、とてつもなく寂しいだろう。
複雑…。
しかし、お決まりのようにキスをしていたら、この話は成り立たない。キス以外のところで勝負(?)している気がする。
戦国武将になってしまった伊藤健太郎さん。一秒たりとも、戦国を抜け出さない。例え、平成にいても武将でいる。
平成の高校生を演じる黒島結菜さん。全身全霊を捧げた若君への愛。どのシーンにも「唯」がいる、「結菜」はいない。
役者同士のぶつかり合い、高め合いが、キスを超えてふたりの崇高な形を魅せてくれる。
観る者がそれぞれの中で、各々のつづきを創る……。
な~んちって!
甘っちょろいことを夢見るのはいかがなものか。
「戦国城郭」
ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)パンフより
もう1つ。忠清は恥ずかしがらないということ。
忠清はちょっとした「秘め事(?)」のとき、傍らに人がいても平然としている。『それがなにか?』という顔をする。
逆に、見た方が少し慌てる。
そんなシーンで思い出すのは、現代の速川家にて。
忠清が唯の写真に見入っているとき、尊がドアを開けて入ってくる。忠清は写真を見ていたことを隠そうとするか、あわてて説明するかと思ったら、なんのリアクションもなかった。
極めて静かに写真立てを棚に戻した。
戦国武将の心構えであろうか。
一国の総領として、幼いころから家臣にかしずかれて育った。身の回りの世話はほとんど全てやってもらってい た。どんな行動も家臣などの見ている公の場所で行う。
そうなると、いちいち、恥ずかしがってなんかいられない。恥ずかしいという感情を知らずに大きくなった……のだろうか?