(つづく)
(つづく)
[ポスター (ワープステーション江戸)]
ゆるゆると書きたいだけ書いてきたのに、まだ、とまらない _(._.)_
でもでも、もう少し・・・。
一本目の柱。
忠清や唯には、実際に会うことができない。(妄想は自由にできるが…)
だから「会える目の前の人」、自分のまわりの人をもっと大切にする。
何かの一等賞になるのは難しい。出来ないかも知れない。
しかし、大切な人との間では、互いがかけがえのない人である努力をすることは出来る。そうして「命を全うする」ことができたなら、それが幸せであろう。
そうやって生きていくことが、戦国の世と今の私たちの暮らしを平面で繋いでいると思う。
ムリヤリこじつければ──、大切な人との関係は、みんな「唯と忠清」ではないか。
もうひとつ大切な柱。
徹頭徹尾、平和を貫いている。
戦国の世も現代も、貫き通す平和への願い。
このドラマは、「愛と平和」を高らかに歌っている。
平凡な言葉に見える「愛と平和」。だが決して陳腐ではない。
鮮やかに組み立てられた伏線、時代考証、見事な構成、カメラワーク、音楽、役者、・・・・・・・・・・・。
全てが相まって「愛と平和」の壮大な世界を見せてくれる。
大げさを承知でいうならば………
「アシガール」は歴史に残るドラマだ!
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+*゚ ゜゚ *+:。.。:+*゚゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
ひゃ~~! ここまで来るのに10カ月近くもかかった。
これからはスペシャル版へ。
えっ! まさかっ!
まだつづくの !?
はい。そのようです。
(つづく)
唯の涙を指でぬぐう忠清。
- 忠清「心得た。許す」
- 唯「本当に?」
- 忠清「なればわしは二度と戦のなきよう、力を尽くすのみじゃ」
唯の頬かむりを外す忠清。
- 忠清「お前を戦場に出すことのないようにのう」
唯の髪を撫でて整える忠清。
- 忠清「これからは、わしがお前を守る」
- 唯「若君」
♬ 青く可憐に 咲き乱れるふるさとは遠く 荒れ果てた道で
助けもなく それでも空をあおぐ ♫
忠清に飛びつく唯。
戦国の世にいて「二度と戦のなきよう、力を尽くす」………
なんて、あり得ない。
戦国武将が戦をしない選択をすることは、ほぼ不可能だ。 でもでも、忠清はそう言いたかった、そう言わざるを得なかった。
結婚するのと、守るのとの二者択一。
唯は「守る」を選んだ。
「結婚しなくてもいい!」と言い切った。 結婚なしで忠清の命を守るためには、唯は忠清の正室や側室(?)をも含めて「守る」ことになる。
そ、そ、それは、ムリムリムリ!!
で、ござろう。
戦国の男・忠清が唯の言葉に応えなくていいはずがない。
「わしがお前を守る」と。
♬ 孤独な夜も 悲しみもあるわ
だけどもう何も 欲しくはない
もう誰のご機嫌も とりたくない
私はワイルドフラワー
トゲのついてる花
私はワイルドフラワー
強い強い花 ♫
「ワイルドフラワー」をBGMに
唯が忠清と初めて会い
馬を追い
忠清の胸に矢が立ち
合戦の場で気を失い
煙の中のおんぶ
走る走る
雑草を食べる
蹴飛ばされる
馬上の二人
・・・・
爽やかに明るく叫ぶ唯!
黒羽城。
忠清が一人廊下を行く。
- 唯「若君」
振り向く忠清。
- 唯「ここ。ここ、ここ」
庭の物陰で手招きする唯。
足軽の着物に頬かむりをしている。
庭に降りる忠清。
- 忠清「姫は何をしておいでじゃ?」
忠清の前に正座する唯。
- 唯「私、どうしても聞いてほしいことがあって」
- 忠清「いかがした?」
- 唯「結婚したら、立派な奥方になるよう一生懸命勉強しますし、おとなしくするし、いろいろ束ねたりしますけど。戦のときは一緒に行きますから。結婚に浮かれてうっかりしてたけど、わたしの一番の願いは、若君の命を守りぬくことなんです。結婚するのと、守るのと、どっちかひとつっていうなら、奥方になったら、戦は駄目って言われるなら、わたし、結婚っていう形にはこだわらない」
初めてこの回を観たとき、忠清の「姫は何をしておいでじゃ?」に、やられた。
だって「 姫 ♡」って、呼びかけている。
ずっと、互いに互いを何と呼んでいるか、興味を持っていた。
唯 → 若君・若君様・忠清様・兄上(長沢城で兄と偽ったとき)
唯のほうは、バージョンが少ない。圧倒的に「若君」が多い。
忠清 → 唯・お前・小僧・そなた・ふく(ふきと偽ったとき)・唯之助・妹(妹と偽ったとき)・阿湖(阿湖と偽ったとき)
忠清は「お前」と呼ぶのがダントツに多い。「そなた」と言ったときは少しドキドキした。ふたりが、同じ高さにいる感じがしたから。
「姫」と呼ぶのは凄い! 同じ高さを超えて、尊敬が見える。大切さが見える。
実際のこの場面は、監督から「ネコに話しかけるように」と教えられたという。
忠清が、ネコに対し尊敬の念を持ったかは定かではないが。
「砦」 ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)パンフより
(つづく)
黒羽城の廊下を行く忠清と唯。
- 忠清「案ずるな。わしがお前を娶ると決めたのだ」
- 唯「若君………。はい。私も若君にふさわしい姫となるため、がんばります」
- 忠清「幾度でも父上にあたり、必ず説得してみせる」
- 唯「はい!」
手をつなぎ廊下を歩む二人。
作者も脚本の方も監督も演出の方も・・
「幾度でも父上にあたり、必ず説得…」という忠清の粘り強い行動をどうしても描きたかったと思う。
考えが違うからといって、すぐに諦めず幾度でもあたるという忠清の姿勢。
結果はどうあれ、行動し続けるという力。
そう考えると「ただ、やる」という唯の生き方に似てくる。
第6回で平成に来た忠清と弟の尊が、唯のことで話をする。
尊が唯の行動に対して、「何も考えていないでしょう。お姉ちゃんは…… 姉は、できるかできないかじゃなくて、ただ、やるって人です」
忠清も、ひたすら行動する。それは唯に倣っていると感じられる。
こうして、ひとつひとつがリンクしながら物語が進む。
深い深い縦の糸。
壮大な横の糸。
「武家屋敷」 ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)パンフより
黒羽城城下町はここで撮影された。
城門前の通りを行き交う人々が見えてくる。
(つづく)
数日後。
忠高の前に忠清と唯、重臣たち。
- 忠高「唯之助を妻に迎えたいだと?」
- 忠清「はっ」
- 信近「恐れながら、唯之助ではございませぬ。名を唯と」
- 唯「唯にございまする」
- 忠清「唯はわたくしを守るため、ひたすら己の足で駆け、勇をふるい、度々羽木を救ってきた者にございます。この者を娶りますことを、なにとぞお許しいただきたく」
- 千原「しかしながら、こやつはただの百姓の小僧にござる。たとえ側室といえども、そのような者を…」
- 信近「お忘れのようだが、唯之助は天野の養女にござる」
- 千原「おお~、後添え殿の連れ子であったのう」
- 信近「それがし、先妻との間に小平太以下、二男一女をもうけてござる。ゆえに後添え、吉乃の一番年長の子は、まぎれもなき、天野家の三男!」
- 千原「次女ではなく、三男 !? 」
- 信近「あ! おのれ、無用な揚げ足取りを!」
忠高も千原も、ここまで「唯を小僧だ」と思っていたなんて!
なんてことだ。
第1回から、唯はことあるごとに「なんで私が女だってばれないのか」と言っていた。見た目が男の子なのかというと、そうでもない。明確に女の子だと思えるが。
ま、そこがこの物語の醍醐味かもしれない。あり得ないことが起きる。
唯は確かに少年ぽい。忠清も「唯之助は女かな?」と疑い始めるのは、地元の豪士の娘・鐘ヶ江の「ふき」との出会いからだろう。もともとあまりおなごに興味のない( !? )忠清だから。
おなごに興味を抱いたのは、正にふき(=唯)の登場からだと思われる。もちろん、忠清は肉食とはいえ、おなごなら誰でもいいわけではなく、相手を見定めている。
前に進む唯。
- 唯「恐れながら。わたくしはただ若君さまお一人を愛し守らんと、はるか遠くからやってきたものにございます」
唯の言葉を遮るように忠清。
- 忠清「側室ではありませぬ。どうか、唯を正室にすることをお許しくださいませ」
- 忠高「下がれ! 昨日まで三男であった嫁など断じて許すことはできぬ!」
- 忠清「父上」
- 忠高「ならぬ。ああ、もう、早う下がれ! 早う!」
そういえば、第4回「ドキドキの夜!」で、すでに見定めていた。
忠清の閨の相手に、ふきが差し出された。
部屋に向かうふきを待ち伏せし、でんでん丸で気絶させ、唯が代わりに閨に入り込む。
忠清は、唯を豪士の娘・ふきと思っている。
おなごが気に入らなければ誘わなくてもよい。「下がってよい」と言えば済むこと。
それなのに……。
「わしは休む。ふくも来るか?」と褥に誘い、
「まだわしが怖いか?」と優しく尋ねる。ためらっている唯に、
「まぁ、よい。腹が決まったら参れ」と、判断を唯にまかせる。
18歳の男子が……、だ。
責任なんか取らなくてもよい立場にいるのに……、だ。
相手が自分をどう思っているかなんて関係ないのに……だ。
しかも、この場合おなごの方から頼み込んでやって来たのに……だ。
このときに腹が決まらなかった唯。
それがこの物語を果てしなく素敵なものにしている。
「武家屋敷」
ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)パンフより
- 唯「若君!」
唯〈 この人の命、初めて会った時より何倍も何万倍も大事なものになってた 〉
唯の頭を支えて床に寝かせる忠清。
目をとじる唯。
唇を近づける忠清。
- 源三郎「若君様」
目を開ける唯。
- 唯「えっ? ええ~っ!」
- 忠清「何じゃ?」
- 源三郎「殿が戦の子細を伝えよとお待ちにございます」
- 忠清「そうか、いま参る」
廊下を行く忠清を、目で追い一礼する唯。
「するする詐欺!」のお時間で~す。
忠清が唯を床に寝かせるシーン。 (オーディオコメンタリーのつづき)
黒島「ここね。いいですね」
伊藤「テストのときに(唇を)近づけるじゃないですか。こうやってここを…。〈 や、もう付くでしょう。やばい! 付く! 〉。でも止まらないから…」
黒島「うん」
伊藤「ちょっと止まっちゃったら、監督が『もう、ちゃんとしっかり “する” くらいの勢いでいって!』。〈 いや、もう付きます 〉と思いながら…」
黒島「(源三郎が)呼び止めるタイミングと、付くか付かないかのね」
キスを「する?」「しない?」は、本当は些細なことに思えて仕方ない。
キスは愛情表現の中のたった一つに過ぎない。
愛は、どんな形をしていてもそれが本物なら伝わる(といいね)。
むしろ、キスをしなかったからこそ激しく高まる心の動きが感じられる……。
といってもさ、ハグはあったし。
キスと同じくハグもなかったら、とてつもなく寂しいだろう。
複雑…。
しかし、お決まりのようにキスをしていたら、この話は成り立たない。キス以外のところで勝負(?)している気がする。
戦国武将になってしまった伊藤健太郎さん。一秒たりとも、戦国を抜け出さない。例え、平成にいても武将でいる。
平成の高校生を演じる黒島結菜さん。全身全霊を捧げた若君への愛。どのシーンにも「唯」がいる、「結菜」はいない。
役者同士のぶつかり合い、高め合いが、キスを超えてふたりの崇高な形を魅せてくれる。
観る者がそれぞれの中で、各々のつづきを創る……。
な~んちって!
甘っちょろいことを夢見るのはいかがなものか。
「戦国城郭」
ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)パンフより
もう1つ。忠清は恥ずかしがらないということ。
忠清はちょっとした「秘め事(?)」のとき、傍らに人がいても平然としている。『それがなにか?』という顔をする。
逆に、見た方が少し慌てる。
そんなシーンで思い出すのは、現代の速川家にて。
忠清が唯の写真に見入っているとき、尊がドアを開けて入ってくる。忠清は写真を見ていたことを隠そうとするか、あわてて説明するかと思ったら、なんのリアクションもなかった。
極めて静かに写真立てを棚に戻した。
戦国武将の心構えであろうか。
一国の総領として、幼いころから家臣にかしずかれて育った。身の回りの世話はほとんど全てやってもらってい た。どんな行動も家臣などの見ている公の場所で行う。
そうなると、いちいち、恥ずかしがってなんかいられない。恥ずかしいという感情を知らずに大きくなった……のだろうか?
座り直す忠清。
- 忠清「唯。この忠清の妻になれ」
- 唯「ん? 妻?」
唯を見つめる忠清。
膝を進め、顔を近づける唯。
- 唯「なります!」
- 忠清「よい返事じゃ」
- 唯「あの…」
両手を広げる唯。
- 唯「ギュッてしてもいいですか?」
- 忠清「ギュ?」
- 唯「あの…」
唯を抱きしめる忠清。
忠清のプロポーズシーン。
黒島結菜さんと伊藤健太郎さんが、オーディオコメンタリーで、話している。
黒島「ここねえ」
伊藤「ここよかったな」
伊藤「これ好きだなあ、オレ。かわいいな、ってなって。『ぎゅってしてもいいですか?』・・・」
黒島「なんか赤ちゃんみたいな」
伊藤「『ぎゅってしてもいいですか』。〈 いいよぉ 〉って」
言わずもがな、彼らは役者。役の上でのセリフに過ぎない。
でも、この瞬間、相手を信じ、敬い、愛していないと出てこない感情ののった言葉。
役者は恋をする。そのとき……
と、勝手に思う。
ワープステーション江戸(茨城県つくばみらい市)駐車場。
「アシガール」の撮影場所。